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8月下旬、再び(株)アルムの大牟田工場を訪れた。スレート葺きの工場内部はサウナ状態。羽布張りの作業は、今回、船舶塗装の専門家が3人で担当している。
羽布張り作業用に組まれた鉄製パイプの足場は、高さ約6m、横幅は翼長に見合う約28mに及ぶ。主翼は、前縁を上方にし垂直に立てられ、左右に翼を広げた状態で吊されていた。羽布張りが全て終われば、主翼は、真っ白の巨大な蝶が羽を広げたようにその優美な姿を現すはずだ。
8月28日現在、左翼は先端片側一部を除き羽布張りを終えており、ドープ塗りは3回目終了。垂直尾翼は羽布張り部分も完成済み。エルロンは羽布を張り終え、ドープ塗り1回目の作業中であった。
羽布張り工程概説(主翼)
●羽布生地
1インチ平方あたり80〜84本の綿糸が平織りされたアメリカ製綿布(MIC-C-5646F)を使用。羽布は、縦横の収縮比が同率でなくてはならない。現在この素材は国産品がなく、輸入品を使用。(実際の航研機には、最上級のエジプト綿の布が使用された)
●張り方
金属のリブ(翼の小骨)に羽布を張っていく。まず、直接金属部分に布を張ることはできないため、幅3cmほどの綿テープをあらかじめリブ上にゴム製糊で付着し、その上に羽布を張る。今回は、この綿テープの張り方一つも、何度も実験を重ねて決定された。すなわち、羽布の乗るリブ表面にはゴム糊は付着させず、リブ側面の方にゴム糊を塗っておき、綿テープをリブを覆うように張り付ける。羽布は、この処置を施したリブ上にドープで接着していく。(実際の航研機では、リブに包帯状に綿テープを巻き付けたともされる)
作業は、2名が足場の最上段に向かい合って立ち、前縁から翼の表裏に垂らした羽布を、上から順に下方後縁に向かって張り付けていく。
●羽布のリブへのかがり付け
羽布張りが完成した部分は、羽布とリブを糸でかがり付ける。(飛行中、羽布に作用する空気力は正しくリブに伝えられなければならないため、このかがり付けが行われた)
糸は純綿製が要求され、かつては凧糸が用いられた。今回は水糸を使用。かがり糸の結び方はイラスト参照。実際の航研機では、翼を挟んで両側に立った2人の女性が、交互に30cmほどの鋼線製の長い針で翼を貫きかがったという。
●ドープ(羽布塗料)
ドープは、羽布の目を潰して面を平滑にし、同時に羽布に十分な緊度を与える酢酸繊維素の透明塗料で、羽布上に11回塗り重ねられる(実際の航研機と同回数)。ドープはドイツからの輸入品を使用。最初はたわみの見えた羽布も、この作業によって1枚板のようにピンと張った状態となる。ドープを塗る間隔は約6時間おき。乾いたら次の塗りにかかる。塗った回数を忘れないように羽布の端に鉛筆でメモをとる。
*水平尾翼・エルロンともに羽布張りの方法はこれに準じる。
胴体・尾翼その他の進行状況
胴体(レーザーカットによるアルミフレームで構成)には、唐津で製作されていた尾翼取り付け部(アルミ製)が最後部に設置された。胴体外板は、圧延機で成型されたアルミ板で、徐々に胴体に貼り付けられている。
垂直尾翼はすでに完成、工場内に保管されている。尾翼や尾翼周りの金属部位には、皿ネジを使用した沈頭錨のリベットが整然と並び、製作者のあざやかな技量を示す。
プロペラ・タイヤ・スピンナーなどもすでに完成。プロペラの製作は福岡、スピンナーは横浜、タイヤは大牟田と久留米で行われ、現在は大牟田の(株)アルムに集結している。各部の製作については苦心談なども含め順次レポートしたい。
今後の予定
羽布張りを終えた航研機は塗装に入る。飛行試験地を満州に予定していた同機主翼には、着陸時に草原の中でも発見し易いよう真紅の塗装が施されていた。塗装の模様は次回に。
▼関連リンク
青森県立三沢航空科学館(仮称)
http://www.pref.aomori.jp/kokukagaku/ |