後藤加代子の悠遊レポート・03
パラグライダーによる山岳フライト
・・・山飛びヒゲ丸がめざすもの
アルピニスト 丸山 隆司さん
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Profile
丸山 隆司
さん
Ryuji Maruyama
1945年満州生。
63年鵬翔山岳会に入会。
穂高下又白谷、赤沢山東壁、黒部別山大タテガビンの鵬翔ルートなど初登。
積雪期劔沢大滝登攀の長期計画を立案、73年3月の初登へ導く。
84年山岳同人チーム84創立、代表。
黒部の衆同人。
日本ヒマラヤ協会会員。
パラグライダーは1990年から。
カモシカ・パラパントクラブ会員。
パラグライダーのパイロットには山屋さん(登山家)も多い。中でも際だつ存在が、「山飛びヒゲ丸」こと丸山隆司さん。
17歳で社会人山岳会に所属し、アルピニストとして数々の実績を持つ。40歳で山スキーを、45歳で本格的なパラグライダーを始めた。
南アルプスの山からはすべて飛び、北アルプスもほとんど攻略。谷川岳など上越周辺の山はごく初期に飛んでいる。ヨーロッパにも遠征。
決められたフライトエリアで飛ぶのではなく、クロスカントリーでもない。山頂から麓へと飛ぶ。人はそれを「山飛び」と呼ぶ。
●アルピニストがなぜ空を飛ぶ?
「
重
い荷物背負って登るでしょう? 頂上に立って下を見たとき、飛んで降りたら楽だろうなあ、と思いますよね。事実、まったく楽です。どんな高い山でも、日本なら20分も飛べば降りてしまう」
「ヒゲ丸さん」の愛称で呼ばれる丸山さんは、そう言って快活に笑う。だが、背負う荷物は登山用ザック、それにパラグライダー。装備は夏場でも軽く30kgを超える。山上からは、いつも飛べるとは限らない。風が悪ければ、そのまま担いで降りてくる。10回に1回でも、飛べればいいと思う。
「
飛
ぶことには、それだけの魅力があるってことですね。これはやはり、飛んでみないと分かりません。でも、山飛びはこわいですよ。風がどう吹いているか、ちゃんと目的地に降りられるか、グライダーが潰されたら、どう立て直すか。潰されて失速し、100m〜200m落下するのは珍しくありませんからね。何とか立て直す。高い山だからこそ、それができる。パニックにならずに自分をコントロールする。必要なのは平常心。怖いけれど楽しい。その怖さを楽しむんです」
●こだわる
「
前
橋にいた高校生の時、『天下の鵬翔』と言われた東京の社会人山岳会に入りました。高校の山岳部では満足できなくて。シゴキも激しい時代で、合宿には絶対参加です。夏に1週間縦走しないと、次の登攀合宿1週間には出られない。合宿至上主義でしたから、実力はつきましたね」
20歳の記念に初登した大タテガビンの鵬翔ルートは、10代の後輩たちと開拓した。保守的と言われた鵬翔山岳会が若者に認めたこのルート開拓は、丸山さんの実力の証だろう。
「
大
タテガビン・鵬翔ルートの登攀記録を見て下されば分かるんですが、私たちは夏も冬も、全部後立山越えで入っています。黒部ダムのトンネルは使わない。それが私たちのこだわりだった。苦しむかもしれないけれど、黒部の本当の姿に接することができる。仮に第2登になったとしても、充実感はまったく違います」
●支えられる
「
つ
い最近は日光白根山から飛びました。そのために1年間、週末は白根に通い、どの季節にどのルートを飛べば、気象条件はどうで、何が予測されるか、仲間と手分けして情報を集めました。山飛びでは、送電線の位置や降りる場所など、気象以外にも細かな情報が必要です。麓は晴れでも、山頂は荒れていることもあるし、逆もある。登るルートが違えば、吹く風もまったく違う。麓や頂上で登山者をつかまえては、来た方向の状況を聞くんです。でも風の方向や強弱など、誰もそうは記憶していませんよね」
調査のために、白根にもルートを変えて何回も登った。山飛びは、山屋にして可能なのだ。登山で得たものをすべて集約する。
決行の日は、1年の調査を基に、1週間前からの気象の変化をチェックし、前の晩に決める。そのすべてが、約20分のフライトに昇華する。今回は仲間の一人が一緒に飛んだ。しかし大抵は一人で飛ぶ。
「
最
近では山飛びをする人はずいぶん減りましたね。こんなことを続けていると、山屋が山も岩も登れないとか、実際怖いから‥‥、山飛びやそのサポートをして何シーズンも夏休みを使い果たすのは、愚の骨頂だとか思うのかも知れません。仲間は、ほんと有り難い存在です」
●ボアバンのように
山飛びヒゲ丸が惚れ込んだ人物がいる。ガッシャーブルムU峰(8,035m)、そしてエベレストの頂上からも飛んだ、フランス人のジャン・M・ボアバンだ。日本にパラグライダーを伝えた人でもある。ボアバンは、たった1日でモンブランの難しい氷壁4ルートを登り、下りは全部パラグライダーで下った。
「
彼
のように、山に関したものは何でもやってみたい。残っているのが、クリフジャンプ(崖跳び)。ボアバンは、南米のエンジェルホールで飛んでいます。800mの滝の上から飛び、どのタイミングでパラシュートの紐を引くのか。判断は一瞬でしょうね。やってみたいですねえ。次の目標です」
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日光白根山を悠遊と飛ぶ
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鹿島槍ヶ岳をテイクオフ
鹿島槍ヶ岳頂上のヒゲ丸さんとサポート隊の皆さん
写真提供:浅野敏勝氏
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