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ヤートセー ヨーイトナ ヤンダヤンダは女のクセだよ 嘘ダバ引っ張ってミレ 与平さんは年甲斐もなくタミさんに懸想している。タミさんは女盛りだがひとり者だ。村外れに一軒借りて棲み、頼まれ仕事に精をだす働き者でもある。時には仕事が切れたりもするが、いつもにこやかに笑っていて愛想がいい。 今日も暑くなりそうだ。与平さんは田の草取りのひと仕事を終え帰る途中だが、法徳寺の門前まで来てタミさんと出会った。「遅くなったが朝飯を食おう。次の段取りは」など考え事をしていたから、人が近づくのに気がつかなかった。目の前に風呂敷包みを持ったタミさんの笑顔を見付け、思わず与平さんはへどもどした。 「暑くなりそうですね」とタミさんが挨拶し、与平さんは口の中でもごもごと答える。とっさに気の利いたセリフが出てこないのが口惜しい。 与平さんにはアバがいて子がいて孫までいる。年甲斐もなくとはそういうことだから、つける薬だって一段と難しかろう。なにしろ与平さんは、お医者様でも草津の湯でも、直らぬ病に罹ってしまったのである。 五寸も引っ張れば吉左右は分かるのだが、与平さんにはタミさんを一寸だって引っ張る勇気が無い。「爺様に二尺も寄ってくるはずがない」と哀しく諦めているのだ。それだけ与平さんは純朴なのである。 思い出せば与平さんだって若い頃があり、人並みに夜這いはしたし呼吸は忘れてはいないはずだが、すっかり本家がえりして十五六の若勢のようにただ恐ろしい。すげなくされたり侮りを受けたりしたらどうしよう。 法徳寺の角を曲がっていったタミさんの後ろ姿を、与平さんは切ない想いで見送っている。肩の鍬がにわかに重くなった。 歩きながら「庄屋の徳平衛は同い歳だ」と与平さんは思う。徳平衛は隣町に小料理屋を一軒出し、妾のオチカに切り盛りさせている。店の名は「おかめ」、オチカは美人ではないが腰が張り、後ろ姿など振るい付きたくなるほど色気がある。鼻の下の長い輩がそんなオチカ目当てに通い、店は結構繁盛していた。羨ましい奴はどこまでも羨ましい。 もちろん「おかめ」は内緒である。与平さんが知ったのは偶然だ。たまたま親戚の法事があった夜、偶然オカメの裏口の道を通りかかった。そこで見かけた男と女が徳兵衛とオチカだったのである。 与平さんだって他人の恋路の邪魔をするのは野暮だと知っている。知らぬ顔をしたかったのだが、つい徳兵衛と目が合ってしまって妙なことになった。慌てた徳兵衛が四五日後、口ふさぎに「おかめ」で酒を奢ってくれた。ほんの徳利2本と干物だけだったが、断りもできず御馳走になり、いまでも与平は義理を立てている。 でもこんなとき、ついオチカを思い出して胸が苦しい。ため息をついたとき与平さんは自分の家の門の外にいた。アバの声が聞こえる。 |
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