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東京谷中には坂が多い。そのなかに「夕焼けだんだん」という名所がある。「だんだん」とは幼児語のように聞こえるが、れっきとした江戸弁で階段のことだ。坂が急になって階段で応じた。だんだんである。 案外と道幅が広く、夕焼けが綺麗に見えた場所である。空一面が茜色に染まれば、「あしたはきっと晴れる」と豊かな気持ちになれたに違いない。江戸っ子のきっぷの好さと、明日を信じる楽天的な気風が出ている爽やかな名だ。 「だんだん」が急に自民党の総裁選になる。連想にはちゃんとした理由があって、日本社会が変化を遂げるとき、どうしても段になってしまうのだ。今度の自民党総裁選は、段を跳躍できるかどうかの境目になると思える。 歴史の段には決まった形がある。まず空気が変わる。そして空気にふさわしいシステムが出来上がっていく。識者や学者の説を聞いていると、空気に言及する者がいない。明日にふさわしいシステムの提案が無いことばかりを言う。人によっては現内閣の施策を徳川吉宗の改革になぞらえ、退歩だという。 それを言うなら、明治維新の旗印は尊皇攘夷であった。システムの主張として聞けば、平安の昔に帰れということである。千年かかって折角積み上げたものを、全部否定することをスローガンにしたと解釈してもおかしくはない。 だが明治維新の尊皇攘夷は、徳川幕藩体制をひっくり返すための方便に過ぎない。維新の志士たちが命がけで奔走したのは空気を変えるためであった。スローガンなどどうでも良かったのである。歴史が旋回するとき、掲げたスローガンの良し悪しを詮議しても何の役にも立たない。攘夷などあっという間に反故になった。 さて自民党の総裁選である。読売新聞は自民党総裁選について所属の国会議員と都道府県連役員を対象にアンケートを実施したそうだ。 結果は告示の8日現在、182人が首相再選支持だそうだ。国会議員票の過半数(179票)、 党員票でも首相が優勢と予想されている都道府県は38あるそうである。 国会議員へのアンケートは、4日から8日にかけて357人の自民党国会議員を対象に実施し、204人(衆院149、参院55)から回答を得た(回答率57%)。都道府県連役員については、県連幹事長ら役職に就く3人をそれぞれ選んで回答を求めた。 国会議員はアンケートへの回答のほかに匿名を条件に答えた議員を含めると、首相の支持は主流派(森派、山崎派、小里グループ)のほかに参院橋本派、河野グループで大勢となり、衆院橋本派、堀内派にも広がっているらしい。 衆院橋本派は8人、堀内派は14人が首相支持を明確にしている。無派閥では9人が支持し、江藤・亀井派でさえ2人、高村派でも1人が首相を支持する意向を示している。 態度を明確にしていない議員の中にも、衆院橋本派や堀内派を中心に、首相を支持する議員がいると見られており、首相が獲得する議員票はさらに上積みされる可能性がある。 党員票については、衆参両院議員と各都道府県連役員に「首相がどの程度獲得すると予想するか」と尋ねて傾向を探った。 首相の獲得する党員票が60%以上と予想したのは、和歌山、石川、岩手など20都府県。50%台と予想したのは、長野、愛知、埼玉など18道県だった。 現首相のシステムへの対応は欠点が多い。にもかかわらず空気を変えることがこの国の真理であることを、多くの人が知っているように見える。 第2次世界大戦の敗北を前提に出来上がったシステムは、奇跡といわれた戦後復興を成し遂げた。この国に歴史にかつて無かった繁栄をもたらしたが、50年を経て老朽化し、新しいシステムを必要としている。是非システムを作らなければならない。それにはまず空気を変えなければならぬ。 変化が階段になるのは新しいシステムを外から輸入したためだ。押し付けられて変わらざるを得なくなるから、変化は急激で振幅も大きい。どうしても階段になる。 しかし今回は、歴史初めて自分たちの手で変化を作らなければならない時を迎えた。うまくやれるかやれないか。その顕著な表れが今度の自民党総裁選である。空気の跳躍を選ぶか旧態を選ぶか、歴史に残る選択が行われようとしている。 |
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