●小笠原沖の春本番
2004年の宇宙開発(海底からの回収作業)は春本番を待って、小笠原の紺碧の海域から始まる。これまでも2000年2月25日に父島沖380km、深度2,800mの海底からH-2
8号機の第一段エンジンの主要部分を探索・回収した実績を持つからだ。
このエンジンは改良型エンジンとして次期H-2Aロケット装備に貢献した。探索・回収に加えて原因究明も快調に進み、打ち上げ失敗も液体水素ターボポンプの不具合に絞られた。
2003年11月29日13時33分、H-2Aロケット6号機は2基の運輸多目的衛星(MTSAT・運輸省調達、約2.9トン)を搭載、鹿児島県種子島宇宙センターの射場から打ち上げられた。
しかし、打ち上げ後約10分で指令爆破。固体ロケットブースター(SRB)のノズル(噴射口)の設計が十分に配慮されたものではなかった(宇宙開発委員会調査部会見解)。これまで開発段階で同様のノズル損傷があったにもかかわらず、万全の対策が講じられず、それが打ち上げ失敗につながったとみられた。
これを受けて宇宙開発機構はノズルの設計変更に取りかかることとなる。まず、小笠原海域の海底からSRBの回収作業に取りかかる。厳しい春本番を迎えることとなったのである。
●悲運のひまわり
打ち上げ失敗の無念さは、搭載した2基のMTSATの役割にもある。MTSATは単なるひまわり5号の後継機ではない。
情報収集衛星として、光学機器とレーダー搭載の2衛星1組となって、南北両極を通過する軌道を周回しながら地上を撮影して、2組が間隔を置いて周回することにより、地球全域を1日に1度は観測する。
現用ひまわり5号は、予備機(軌道上の4号)の運用停止後、2年間は単純運用の悲運にさらされるが、軌道投入もH-2A級のロケットが必要だけに国産衛星H-2Aの失敗は深刻であった。
この衛星は気象衛星や放送衛星と違う偵察衛星に属して、米国では世界初の商業用高分解能衛星画像ビジネスが芽生え、1998年ごろ三菱商事(日本スペースイメージング・JSI)、ロッキード・マーチンが活躍、IKONOS・イコノス衛星として話題を呼んだ。このシステムは北朝鮮によるテポドン発射で防衛問題化した。
●ブラック・ボックス
わが国は宇宙開発に出遅れ、主としてアメリカ企業の技術を導入しつつ成長した。それだけに各分野に国産化を急いだ。
H-1は国産化率90%以上を目指した。メインロケットのほかに、アポジモーターという衛星を静止軌道に乗せるモーター「ブラック・ボックス」が非公開で日産自動車が担当していた。
たまたま「あやめ2号」で失敗、トラブルが起きた。「ブラック・ボックス」で手も足も出ない。当時NHKで「空白ある設計図」というドキュメンタルな開発物語が放送され、「ブラック・ボックス」の用語を、各方面に流行語として使われた。
●次世代の宇宙輸送機
人類はスペースシャトル/ISSとアポロ計画で、次世代宇宙開発の手掛かりを見つけたかに見えた。その反面、丸1年のイラク戦争で自ら多大の犠牲を蒙った。
それにしても1月3日火星到着の探査車スピリットと1月26日火星到着の探査車オポチュニティとも恵まれた地点を得て、懸案の火星有人探査を求める実績を確保した。
にわかに月、火星の有人探査が注目を集めてきたが、地球から月までの距離が片道3日、火星までは6〜9ヶ月の差がある。当面はISSと月面基地開発が焦点となろう。
そのためにも次世代宇宙輸送システム(月やISSへの有人飛行に不可欠)の開発によって大型ロケット、多目的宇宙船などの組み合わせが重要なポイントとなろう。大型ロケットと宇宙船との組み合わせによる新システム(アポロ計画ではサターンロケットの先端に宇宙船を乗せて月面へ人を運んだ)の応用が検討されよう。
ISS(国際宇宙ステーション)への人員機材の輸送から有人火星探査まで、次世代輸送システムとして今後の役割は大きい。
当然、主要機種の交代も必要となる。ISSの完成、月面施設の建設進行によっては新型宇宙輸送システムにロシア、欧州、日本、中国製ロケットの乱舞する時代が到来することとなる。
(2004年3月20日記) |