[ 中村光男の部屋 ]

追憶・宮田大兄  春の陽気にかけて一文をまとめました。




NASA 3月3日発表「火星に大量の水の存在を分析」

宇宙開発は新段階に突入

江南の春

春といえば江南の春である。漢詩の郷里である。長江の中・下流の沃野一帯を指し、上海、杭州、温州(浙江省)、福州(福建省)など主要都市が東シナ海に面し舟運の便もよく、みかんの温州、酒の紹興、陶業の景徳鎮など懐かしい。

ここ江南の地から北西へ3,000km、内蒙古の砂漠に酒泉衛星発射センターがある。戦後25年、中国経済は改革と開放の時流に乗るや、天の利、地の利、人の利を活かして宇宙開発の国際競争に参入した。

2003年10月、中国初の有人宇宙船・神舟5号打ち上げに成功した。有人宇宙船としては、ロシア、米国に次ぐ偉業となった。

中国の有人宇宙飛行プロジェクト指導部は、神舟5号の成功に対し、引き続き6号の打ち上げ準備に入っている。胡国家主席は「歴史的な第一歩」と礼賛したが、国家主導の事業にも拘わらず、その技術開発を含めてプロジェクトを私企業がリードしていることは注目に値する。

今回の神舟5号にしても、ロシアの宇宙船ソユーズそっくりだし、打ち上げロケット長征2号Fも、その原型は大陸間弾道ミサイル「東風5号」の流れを汲む。

またミサイルのエンジンは固体液料やヒドラジン系の液体燃料などのためエンジン構造も単純で、大気汚染に気を使うものである。

ところが、日本の宇宙開発は、初期の時代こそ、アメリカの技術に依存していたが、その後、民間企業参加による最優先課題として取り組んだ。各メーカーの現場ではエンジン部品の「性能アップ、コスト半減」という高い目標に取り組んだ。液酸液水エンジンの頂点を求めて悪戦苦闘した。H2A、スペースシャトル、アリアン5号、いずれも運命の高技術、低コストと闘った。

そこが中国と違う。中国はシンプルで、トラブルの少ないタイプで甘んじた。日本のH2Aエンジンとは基本的に違う。


さまざまな出直し

2003年2月1日、スペースシャトル・コロンビアの事故について、独立事故調査委員会はNASAに対し改善勧告29項目を提示した。このうち15項目は飛行再開前に解決しておかなければならない厳しい条件のものであった。

これに対しNASA、議会筋でもシャトルの飛行再開の際には緊急事態に備えて、別のシャトルを地上に待機させると発表し、シャトルの再開時期を、さらに遠い時期とした。

シャトルの延命とともに、地上とISS(国際宇宙ステーション)を往復するOSP(軌道往還機)で、4〜6人の飛行士を運ぶ新構想を打ち出し、飛行士と資材を別個に運ぶ新輸送手段を検討し始めている。

例えば地上とISSを往復するOSPは、飛行士だけを乗せる「簡易型」シャトルをマークする。宇宙観光船を含めた総合プランも現実化してこよう。

再開。喜びも悲しみもアメリカの宇宙開発はシャトルとともにあった。その役割はまだ尽きない。コロンビア事故をクリアしたシャトルの再開に大きな希望を託している。

第2項目はISSの建設を急ぐこと。ロシアの資金枯渇をはじめとして、息切れしたISS計画の活性化にある。宇宙開発の再検討が展開されよう。

第3項目は月、火星その他未踏破の惑星に対する新輸送手段の開発。火星探査機の開発時代には、どの大学でも探査機模型がゴロゴロしていた。すでに実績をあげてきた火星探査の今後の活躍に期待したい。

第4項目としては、長期宇宙飛行における人体への影響と構想を新たにした新型推進技術の開発である。

江南の春に育った中国の民間企業が世界の宇宙競争に参入してきた。中国は2008年の北京オリンピックに続いて、2010年に万国博覧会を開催する。新時代到来である。

厳しい「改善勧告」を突きつけられたNASA。「設計変更」に活路を求めるH2A。本格的宇宙開発競争はこれからである。

ロシアの宇宙関係者が大挙来日して、ロシア領事館でパーティーを開いたことがある。結局、博覧会は不発に終わったが、次の舞台にナニが飛び出すか。(2004年3月3日)