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「スペースシャトル・コロンビアの空中分解」(乗員7名死亡)のニュースを2月2日朝6時のNHKニュースで聴いた。ショックであった。これからの宇宙開発はどうなるだろうとアタマがいっぱいであった。
それというのも、私は1981年4月の初飛行に合わせて、別冊臨時号を発行した。同業他誌を抜いて、一番槍をつけた。女性誌の編集者は「ハネムーン」向けに、男性誌の編集者は「スター・ウォーズ」向けに構想を持ち寄り、結構編集部も賑わった。
今回は、そんな、生まやさしい問題ではない。事故調査はNASA関係分野にとどまらず、世界の宇宙開発機関共通の課題として提示された。
もともとコロンビアは「健康優良児」としてデビューしたのではない。アメリカは60年代末、人類初月面着陸に成功。ロシアとの宇宙開発で決定的な得点をあげて世界をリードした。
70年代に入るや経済成長も鈍化し、開発予算も抑制された。そんな時代に登場してきたのが「安上がりな宇宙輸送手段」繰り返し使用できるスペースシャトル計画であった。
同時にNASAの名とともに主契約者としてRI(ロックウェル・インターナショナル)がクローズアップされた。RIは主力工場のほかに200社の有力企業を持ち、STS関係ではシャトルの設計、開発、試験、研究施設のほか、宇宙ロケットエンジンで80%のシェアを持つ強者。有人ロケット試験機X-15の大気圏外飛行に成功している。またGPS(Global
Positioning System)の実績を誇っている。
コロンビア号は現存する4機のシャトルのうち最古参。今回の飛行は28回目、81〜82年では世界初の有人再使用型宇宙船として飛行したり、人工衛星の宇宙放出に名をあげた。
惨事は88年のチャレンジャー号爆発事故で2年8か月飛行中止。有人飛行分野ではロシアの規模縮小によりシャトルが浮き上がってきている。シャトル打ち上げの中断が長引けばISS(国際宇宙ステーション)向けの宇宙輸送手段はロシアの宇宙船ソユーズ2機と無人補給船プログレスだけとなるので、ISS計画の遅延は避けられない。
●宇宙ステーション計画に狂い
今回のコロンビア号の空中分解は、機体左側の耐熱タイルの損傷で、大気圏再突入中に左翼付近に通常の4倍の速度で温度異常をきたし、自動制御装置が右に比重を置いて飛行バランスを乱し空中分解に至ったという見方が注目されている。
TPS(Thermal Protection System)耐熱システムはタイル(L1-900)の原料99.7%の純非結晶シリカ短繊維。機体のスキンはアルミ合金に応力スキン構造とし、熱侵入防止構造の上にタイルを張る。
タイルは厚さ5〜19oで片面1,260度に熱しても、裏側は熱くならない。特殊な熱伝導の低い素材で、これを1枚1枚3万4,000枚を張る。飛行のたびに、大気圏再突入で超高度の洗礼を受けるので、はがれやすい。特殊なセラミック製を基板としているが、飛行のたびに点検、修理、張り替えをする。
現有シャトルの飛行回数はコロンビア28回をはじめ、ディスカバリー、アトランティス、エンデバーそれぞれ宇宙ステーションの建設作業を主力として活躍した。2004年5月打ち上げ予定の日本の実験機「きぼう」はどうなるか。
04〜05年に欧州実験棟、米国居住棟、緊急帰還機についで、06年1月から宇宙飛行士7人常駐体制をとる。同年4月には生命科学実験施設「セントリフュージ」を打ち上げることとなっているがコロンビア・ショックをどの程度で回避できるだろうか。
●X-33の開発中止
いずれにしてもコロンビアが就航20年余、すでに寿命はきている。とくにコロンビアのテスト飛行を遅らせた原因に機体や翼の裏面に張りめぐらした耐熱のタイルと高熱侵入防止構造の開発があった。なにしろシャトルの表面高熱は並の航空機にみられるようなアルミ/チタン合金による応力外皮構造のほかに超耐熱材による被覆構造との二重構造となっているばかりか、原料の非結晶のシリカ砂タイルの開発に苦労が多い。またコロイド状のバインダーを加え、ブロック状に固めマイクロ波オーブンで乾燥、焼入れ仕上げするが、1機3万4,000枚に及ぶ数量だけにタイルの強度、重量の管理もむづかしい。
コロンビアの初飛行本番のときでも、発射上昇の衝撃で低温部の17枚が落ちた経験がある。最後の着陸まで、気をもませたものである。
そんなくらいだからNASAが次世代のシャトルの開発に着手したのは早かった。X-33の開発計画ではロックウェル、MD、ロッキード・マーチン3社からNASAはロッキード・マーチンを選んだ。計画は1996年にスタートした。「くさび」型で、全長21m、全幅23m。液体水素と液体酸素を推進剤とした。総重量128t(打ち上げ時)。
マッハ13のスピードの弾道飛行により1万6,000kmのユタ州空軍基地に水平着陸(無人機)する計画であった。
X-33実験がうまくいけば、実用機(宇宙往還機)ベンチャースターの製作にとりかかる予定であった。X-33はベンチャーの2分の1の実験機であった。その後、ベンチャーは貨物室を機体外部へ移し、垂直尾翼も変更された。
ベンチャーが実現すれば宇宙ステーションとの往復や、各衛星の打ち上げ、宇宙の商業目的などに利用され、コストも現在の10分の1と期待された。
なんといってもX-33は完全再使用型の単段式シャトル(SSTO)機体に搭載したエンジンだけで一気に軌道まで飛行する宇宙往還機を目指していた。メンテナンスも簡単であった。
ところがX-33の熱防護システムにセラミック製のタイルの代わりに複合材による液体水素タンクを使用した。この重量軽減に失敗し、1999年11月のテストでタンクに亀裂が生じ、01年3月1日開発中止となった。軽量化のため金属を使わずに複合材を採用したが、結局これが失敗となった。
NASAはX-33の開発中止とともに、次世代シャトルの実験も中止した。
それではNASAのシャトル計画はどうなっていくのか。またどのようなシャトルが実現するか。1970年代のテクノロジーで2008〜2010年目標に2段式完全再使用型をねらうか。再び単段式シャトルをねらうか。
ロシア、中国に続き日本も2020年目標に有人軌道船(無人の水平離着陸機の背に載せる方式)の構想をねっている。新たに独自の有人システムに挑戦する余裕があるのか。
軌道船は全長36m、全幅14m、130tで5〜8人乗り、無人水平離着陸機は全長65m、全幅36m、140t。巨大な燃料タンクを使い捨てにする米シャトルと設備の再利用でコストダウンを図る日本式とどこまで対抗できるか。
コロンビアの空中分解の投げかけたテーマは古くて新しい課題といえよう。(2003年2月4日)
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