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精密図面を描く(1)
スケール

図面を描くときに、まず決めなければならないのが縮尺比である。尺度ともいうが、英語ではSCALEである。要するに、実機の何分の1に縮めて描くかである。

対象となる機体の大きさにもよるが、構造を含めた精密図面の場合は、基本的に1/20で原図を描くことにしている。全体の形状的特性をつかむのには1/40が最も適しているが、細部を表現するには1/20以下では難しい。

川崎の設計部で作成された装備配置図は1/5で描かれていたが、細かい寸法データがない場合は、あまり大きい図面ではかえって全体の感覚がつかみ難く適当ではない。

トレースも同じ1/20か1/30で描く。実際に「航空情報」に印刷されるのは、1/32か1/48なので、仕上がりを考えて縮尺比を選ぶ。墨入れには、細部や点線は0.1ミリ、実線は0.18ミリまたは0.2ミリのロットリングを使用している。組み合わせにより表現が変化し、作図者の個性が現れるようだ。

さて、航空雑誌に発表される図面には、いろいろな縮尺が使用されているが、昔は具体的にはプラモデルが出現するまでは、1/50が一般的であった。これは、日本での寸法基準がメートル法を採用していたので、割り切りのよい縮尺比として、1/10、1/20、1/50、1/100などが使用されていた。ソリッドモデルは当然ながら、1/50、1/25がスタンダードで、現在でもこれは厳格に守られている。

ところが、プラモデルが出現するや、1/48や1/72や1/144といった見慣れない半端な縮尺比が現れた。欧米生まれのプラモデルは、フィート・インチ法を基準にしていたのである。それにしても、どうしてこんな中途半端な縮尺比が使われるのか不思議で、1フィートが1/4インチに相当する縮尺が1/48になり、3/8インチ相当が1/32になることを理解するのにかなりの時間を要した。

今や縮尺比はプラモを対象に、国際的にも1/48がスタンダードになってしまった。ソリモファンには申し訳ないが、この図面集も海外のファンも考慮して1/48に統一させていただいたのでご了解願いたい。

精密図面を描く(2)
データ <その>

作図という作業はデータを抜きにしては始まらない。形状に関するデータは、多ければ多いほど正確な作図が可能になる。

写真も作図に欠かすことができない存在だが、飛行機のように大きい物体を撮影する場合、どうしてもレンズの歪みにより、正しい形状を再現することは困難である。そこで必要になるのは、それぞれのポイントの正確な寸法を示すデータである。

ところが、実機に直接お目にかかれない我々としては、今までに見た写真によって、形状のイメージが、ちょうどブロマイドの中の憧れのスターのように、すでに強く焼き付けられている。そして、現実の素顔を知って、はかなくも夢が崩れさるように、既成イメージと厳密な寸法形状とのせめぎあいが、頭の中で渦を巻いて、図面を引く手を悩ませることになる。

図面に寸法表示を入れるのは、ある意味で自殺行為といえる。図面と寸法が食い違っていたり、寸法自体が間違っていれば、もう図面は価値を失ってしまう。作図をする者にとっては、正確度を証明する強い味方であると同時に、過ちを犯す罠でもある。

たった一つの部分の寸法が分からないため、作図途中で図面ケースに眠ってしまい、再び製図板にのる日を待っている図面もいくつかある。

正確を期するため、オフィシャルな資料からデータを選び出すのだが、これも人間のすること、記入ミスの数値を信じて、パニックになることもよくある。信じられないことだが、内外を問わず軍の取扱説明書にさえ、うっかりミスが存在するのである。もっとも、それを発見することも、作図に伴う楽しみの一つかもしれない。

精密図面を描く(3)
データ<その>

資料として集めたデータに基づいて作図を進めていくと、思いがけない問題にぶつかることがある。何事にも約束事があるように、データもそれぞれの項目ごとにそれが何を意味し、何を表すものかが決められるわけである。この一見何でもないことが、意外に解釈が難しい。理由は条件説明が欠けているためである。

例を挙げてみると、

全幅:

機体に向かって左右の最大幅を示す。
着脱式の翼端燃料タンクは含まれるのか?
翼端に突出している航法灯は含まれるのか?

全長:

機軸方向の最大外寸を示す。
水平状態か、3点状態か? ピトー管は含まれるのか? 機銃は含まれるのか?

全高:

上下方向の最大外寸を示す。
水平状態か、3点状態か? 翼折り畳み状態か否か?
プロペラ先端からか、プロペラの状態は? 垂直尾翼上端からか?
地上線は、脚全伸長状態か、静止荷重状態か?

  
といった具合で、条件を確かめないと数値が意味をなさないことになってしまう。厄介なことに、一般に発表される寸法データにはほとんど条件表示がない。作図による試行錯誤で探り出す作業が必要になるわけである。

もう一つ、同じ機体の寸法が、軍の資料と製作会社の資料とで、食い違うことがある。おそらく、軍は用兵の立場から、格納庫や空母のエレベータ・デッキに収まるか否かを判断するため、主として3点姿勢における寸法が基準となり、あまり小さな数値は必要でないようだ。一方、製作会社の場合は、設計製作の立場から必要な基準で寸法が表示されることが多いようである。いろいろと楽しみのネタはつきない。

精密図面を描く(4)
試作機とは?

「試作機」という言葉の響きは、何かしらミステリアスなロマンに怪しく彩られていて、われわれ飛行機マニアの心を熱くときめかせてくれる。

試作機とは? 簡単に言ってしまえば、何らかの目的、必要性があって、その実現のために、試しに作られる機体のことである。しかし、その内容は実に様々で、少し整理をしてみたいと思う。

●原型試作機 PROTOTYPE
陸軍、海軍、空軍、民間会社などからの発注や、あるいは自社の自主発想により、開発設計したものを、実用化と量産および運用整備を目標に、その原型機として飛行テストのために1〜2機試作する機体のことで、一般的にはほとんどがこの種の試作機である。

●増加試作機
テストの結果によっては、改良を加えたり、量産時のより確かな資料を得るため、さらに数機を追加試作する機体のことである。場合によっては数十機に及ぶこともあり、時にはそのまま試験部隊を編成し、実戦に参加して、具体的に実用性能をテストすることもある。

●量産試作機 PRE-PRODUCTION
量産時の生産性、治工具や工員の配置、性能のバラツキ等のチェックのために、量産の基準に合わせて試作される機体のことである。

●研究機 RESEARCH
今までの常識的な技術を打破し、さらに一段飛躍する技術革新のための研究、あるいは各種の記録を更新することを目標に、量産性や実用性は犠牲にしたり、まったく無視して試作される機体のことである。したがって、ただ1機だけとか、極めて少数の試作に終わることが多い。

●予備実験機
新技術への大きな躍進には、大きなリスクが付き物である。あまりにも危険や未知の不安要素が多すぎると考えられる場合には、現状技術と飛躍的技術の間をとって、より安全なレベルで、本番の予備段階として試作される機体をいう。

●実験機 EXPERIMENTAL
実用化や量産といった束縛条件から解放され、新しい空力理論といった学説や、研究実験の積み重ねから提議された主張を、実機に試すことで、その真価を裏付けるために試作される実験用の機体のことである。そして、飛行実験によって得られた貴重な結果から、さらなる展開につながったり、論理の誤りを正す手段を見つけたりすることになる。

そして、未来の新しい航空機会開発のための基礎となる資料を提供する役目を終えて、静かに消えてゆくのである。

試作機、それは、夢に与えられた翼である。

精密図面を描く(5)

練習機とは?

当然ながら、物事をマスターするには、何事でも、易しいものから難しいものへ順番に段階的に覚えるほうが理にかなっている。

操縦訓練計画では、体系的に、初歩練習機 → 中間練習機 → 高等練習機といった順に、習得した技術がつながるように、それぞれの機体特性を関連付けて用意される。しかし、現実には実用機の性能の進化は予想外に早く、練習機の準備が追いつかないことがあるようだ。以下参考までに各練習機の特性を拾ってみよう。

●初歩練習機(PRIMARY TRAINER / PT)
操縦技術も同じく、まず空を飛ぶ体験から入って、徐々に舵を操る技術を身に付け、離陸、着陸、直線飛行、上昇飛行、降下飛行、旋回飛行などの初歩の操縦を体得するための機体が初歩練習機である。軽量で翼面荷重も小さく、特殊飛行はできないものもある。とくに離着陸が容易であることが要求される。降着装置も手荒いランディングにも耐えられる頑丈さを備えていなければならない。

●中間/基本練習機(BASIC TRAINER / BT)
初歩的な操縦技術を習得した練習生が、やや高度な特殊飛行、急旋回、失速、錐揉み、宙返り、横転などを練習するための機体で、9G程度の強度を必要とする。そのほか簡単な航法や無線通信の練習をする設備も備えているものが多い。

●高等練習機(ADVANCED TRAINER / AT)
実用機に近い性能を備え、実機に移行する前段階の訓練が実施できることが要求される。操縦訓練以外にも、爆撃、射撃、航法、通信、写真撮影などの広範囲な訓練機能を備えている機種は機上作業練習機と呼ばれる。実用戦闘機を複座に改造したり、そのまま軽量化して練習機として使用する場合もある。最近のジェット機などは、当初から練習機型を同時に設計開発するケースが増えている。


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