Minoru Matsuba vs Toyoaki Miyata

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松葉 稔

宮田豊昭

スカイネット・ワン編集部

三菱96式艦上戦闘機
Mitsubishi A5M2b Type 96 -II Kai Carrier Fighte
美しさの極致

これはもう日本の戦闘機設計のマイルストーンというかね。ひとつのエポックをつくった機体で、堀越さんの力作ですわ。でも試作第1号機は、こんな不細工な飛行機をよくもつくったと思うようなひどい出来だったの。それを一生懸命改良してね・‥。実はこの飛行機も何を隠そう子供ころの第一印象が強烈で。

あっ、幼児体験ね。

「片翼帰還の樫村」で有名になったエース。空中戦で弾がなくなっちゃって、カーチス・ホークに体当たりして、墜落しかけたけれど、左翼半分がもぎれたままで基地に帰ってきた。そのニュースを聞いて「日本の飛行機は優秀だ。 かたっぽ羽がもげてもちゃんと飛べるんだ。こんな凄い性能を持っているんだ」と感動しまして、非常にシンプルな動機だけど、頭の中にインプットされちゃってね。

これは平面型を見たら、空冷エンジンだから頭はでっかいけれどもね、スピットファイアよりもきれいだね。

きれいですよね。この曲線は素晴らしいですよね。翼の形、尾翼の形。楕円形でしょ。

この平面型を見て「パッ」と思い出すのは、鈴木春信とか喜多川歌麿の線。もう少し先に行くとね、天平の弥勒菩薩をイメージするね。

S字ラインの美しさに共通するものがある。

ウン日本人の感性にぴったりだね。
宮田さんのイメージは女体なんだ(笑)。

そう(笑)。柳腰にね、弥勒菩薩も男だか女だかわかんないでしょ。美の極致みたいになっちゃうんですよね。それを飛行機にしたらたぶんこれですよ。主翼もそうだし水平尾翼も方向舵もね、もうほれぼれするようなライン。
ほんとに絵としても美しいですね。これが飛んで戦闘をしたなんて、あんまり思えませんね。物理的に存在するとしたらどうなんだろう・‥。
優雅な形ですね。
堀越さんが生きておられて、自分のつくった飛行機の中で一番気に入ってるのっていったら、たぶんこれじゃないかなと思うんだな。
まあ一番苦労してまとめた機体でもあるし。最初は醜いアヒルの子で、型を進化するごとにね、だんだんきれいになるのよ。完成度が高まってね。最後の機体なんて実にバランスがよくて。

まさに彫刻で彫り上げ、磨き上げて、美の極致に到達するというような・‥。

そうそう、試作機なんか見るとね、松葉さんの言うとおり、醜いアヒルの子もいいところ。田舎の美人としては素質はあった女の子が、都会の水に洗われて、あか抜けていく過程というのがね、よく分かりますよ。

[飛行機の基本的構造が生まれた年]

96艦戦が飛んだ1935年というのは、飛行機でいうとひとつの区切りの年なの。1930年代になってからものすごく航空は進歩して、35年ぐらいではひとつの回答が出るんですよ。その回答に従ってつくった飛行機、つまり1935年に初飛行という飛行機には、いい飛行機がいっぱいあるんですよ。それが私の生まれた年でもある。

まず一番初めに出てきたのが、この96艦戦、次がメッサーシュミットBf109、それからハリケーン。同じころにB-17、また同じころにDC-3が出てきて、戦闘機としても4発爆撃機としても旅客機としても、ほとんど完成された飛行機が出て来はじめた年。
それは「全金属製、セミモノコック、低翼・単葉、引込脚、可変ピッチプロペラ、フラップ」という、いまの飛行機の、ジェット機になってプロペラはなくなったけれども、基本的な構造としては、全くその時と変わっていないんです。

ところが、ハリケーンもメッサーシュミット109も第2次世界大戦の終わりまで戦ってる。一方日本の96艦戦とか97戦というのは、戦争が始まったときはそれなりにいっぱいあったけれど、ずっと戦場で活躍するというのはほとんどない。生まれた時期は何ヶ月しか違わない。それにもかかわらず、メッサーシュミット109は、どんどんどんどん成長して働き続けているの。

なるほど。

確かにおっしゃるように、向こうの機体はね、オリジナルができてから、どんどん改良を加えてきて、最後には別の機体になるくらい素晴らしいものになるわけね。さっきいったタイフーンもそうでしょ。

最初は厳ついやつだけれども、その後になると翼がスムーズに薄くなってかっこよくなって、最後は空冷エンジンまでつけて、そのたびに完成度が高まってきれいになっていく。
ところが日本の場合は、そうして変わっていって完成度が高まって活躍し続けるような機体はないわけよ。ゼロ戦だって最初から最後まで同じモノしか作れなかった。せいぜい羽をちょんぎったりエンジンを換えてみたりで・‥。

日本人に言わせれば、最高のレベルに達したといっているんだけれど、世界の水準でみれば三役ではないわけね。よく「名機100」なんかに96艦戦とかなんかが載ってるけれど、あれはひいきの引き倒しで、幕内に入ったけれど、15枚目とか16枚目で、大関とか関脇ではないんだよね。舞の海みたいなもんだよ。智乃花とかね。

いろいろ技はあるんだけれども、大成できない。だけど僕の感じとしては、日本では「96がダメならゼロがあるさ」とかいって、すぐ次が出て来るわけなんですよね。
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