Minoru Matsuba vs Toyoaki Miyata

006

松葉 稔

宮田豊昭

スカイネット・ワン編集部

戦闘機のイメージ 

戦闘機のイメージというのは「速い、強い、カッコイイ」。男の中の男、万全・超撃退じゃないといい戦闘機ではない。さっきタイフーンの話がでたけど、あれだって戦国武将だよ、大身の九尺柄の長い槍をもって、真っ黒い、あるいは真っ赤な甲冑を着て、猛然と突撃していくというイメージで、強いというそのもの。だからキムタクみたいじゃないんだな・‥。

そう、ちょっとヤワだな。

シュワルツェネッガーみたいなね。戦闘機というのは男の体臭がムンムンするようなね。まさにタイフーンとかテンペストなんかね、足をぐっと踏みしめて、ガーッと口を開いて「さあやるぞ!」と、そういうイメージ。

そう。タイフーンは、空中戦もさることながら、20ミリ機関砲を4門もって地上襲撃をやった。そうすると凄い威力なわけ。

20ミリ4門というと、具体的にはどんな威力なんでしょうか。

この間の不審船が来たときに、射撃してきたのが20ミリ機関砲でしょ。あれ1発で、船が沈んじゃうんだから、たった1門ですよあれは。それを4つもっていて、一斉射撃されたら、それは凄いパワーですよ。

あれが飛行機に付いていたんですか! それは恐ろしい。もの凄く怖いですね。

近ごろの人は機銃掃射を受けたことはないと思うんだけれど、オレ子供の時にあるんだよね。12.7ミリで、鉄道の線路をぶち抜く破壊力だからね。

そうあれは怖いですよ。12.7にはよく撃たれましたね。

空襲は恐ろしいと思うだけでとても想像しにくいんですが・‥。

宮田さんや我々くらいの年代は、アメリカ機に追っかけ回された経験があるけれど、それはおっかないよ。夏の日なんて、暑いからみんな素っ裸でいるときに、ワーッとアメリカ機が来るんだから、逃げようがない。だから裸で池へ飛び込んだり、そのまんま逃げたり、えらい目にあった。 だけど、不思議に怖さというよりも、僕なんか飛行機が好きだから、どのくらいの威力があるものかと、そのことが非常に興味があってね。まさか自分がやられるとは思わない・‥(笑)。

そうそう、飛行機が飛んできたから、喜んで家から飛び出したら、バリバリーと撃たれてね・‥。

パイロットの顔が見えるんですよ。風防を開けててね、のぞいてんだよ。

そうそう、風防を開けているということはね、もう日本の戦闘機なんかまるっきりナメてるんだ。松葉さんの時もそうでしたか、私の時も風防開けてやがって。

その機体は何だったか覚えてらっしゃいますか?

それはね、撃ちやがったのはね、どう考えても、コルセア。

僕はね、ヘルキャットです。グラマンの。

やっぱり覚えてらっしゃるんだ。ちょっとゾゾゾッとします。

それがおもしろいの。ヘルキャットが降下してバーッと射撃してくるでしょ。あの時初めて知ったんだけれど、12.7ミリが6門あるでしょ、あれ一斉射撃するとね、硝煙が凄いの。 煙やもの凄いガスがブワーッと流れるわけですよ。それを見て「あっ、ヘルキャットが落っこちた!」と思ったわけ。でも本当は落ちたんじゃない。向こうは煙を吐いていただけで‥‥(笑)。

銃口の周りはものすごい硝煙で、翼には煤がつく。ああいうのはプラモなんかもリアルにやってもらわないとね・‥。 ちょっと話がそれるけど、実際に銃を預けられて自分で射撃をするでしょ、後の手入れがもの凄く大変なんだから。

備前長船とか銘刀の手入れとは全く違う。

違う違う、そんな優雅なもんじゃない。掃除をしなかったら、次に銃を撃てない。撃った後銃身を覗くと煤だらけで中が見えない。煤は3日間ぐらいでるからね。だから西部劇なんかでドンパチやってるのを見ると「ああ、あいつは今夜延々と掃除をするんだろうなあ」と思う(笑)。

撃てば撃つほど手入れが大変になる訳ですね。

私らコルト45という軍用拳銃では一番ポピュラーな拳銃をもたされた。弾を入れないで空っぽのときと弾を入れたときと、重さが全然違う。ピストルの射撃をやるでしょ、私なんか体力ないから、片手で持ち上げることがほとんどできない。 左手を添えておかなきゃとても撃てない。で、弾がどこへ行くかというと、下へ行くんだから。みんな足下へいっちゃう。自分の足を打っちゃうようなことが出て来るんだから・‥。鉄砲というものは、そういうものなの。

[機銃と航続力が決めて]

話を戻すと、機関銃にしても弾を入れたらものすごく重くなるんだね。1発1発に目方があるでしょ。機関銃1銃当たり何発もてるかが重要になってくる。口径12.7とか20ミリなんて簡単にいうけれどね、弾が何発あるかということの方がよっぽど重要なんだね。

少なくとも100発〜150発くらい積みますから、20ミリ用というと薬莢もついてるわけだから、それで150発といったら、凄い目方になってくる。だから、いろいろ矛盾があるわけ。たとえばタイフーンなら、20ミリ機関砲を4門積む、弾倉と給弾装備を積む、それだけで目方が相当あるからガソリンを沢山積もうと思っても、重量オーバーで積めないわけよね。 だから、どっちをとるかでしょう。日本の場合は、航続力重視のためガソリンをいっぱい積んだから、機銃は沢山付けられない。7.7ミリ2門で我慢しようということになる。ゼロ戦は20ミリ機関砲を付けましたけれどね。

だからね、戦闘機の能力の中には、鉄砲=機銃と足の長さ=航続力が、どうしても欠かせない重要な要素になって来るんだよね。

納得できます。

それに空中戦をやっているときには、ものすごいGがかかるから、機関砲の弾が送れなくなっちゃうこともある。

ベルトで給弾していくわけだけれど、Gがかかると、引っ掛かっちゃってスムースに滑らなくなりますからね。

メッサーシュミット109はプロペラシャフトのところから弾が出るようになってる。20ミリとか37ミリ。そうすると、弾倉が下に行くんだよね。猛烈にGがかかると、弾そのものが下に下がろうとするんですよ。そうすると、弾を押し上げてやらないとダメなんだよね。 5Gくらいかけて戦闘しているときに、弾を撃とうとしたら、弾がでない。空中戦やってるときは、1秒とか2秒くらいしか、射撃するチャンスがないのに、その時引き金を引いたら弾が出ない。

そう、まだ出ないだけじゃいいんだけれど、途中で引っ掛かって暴発したら大変だもの。撃ったとたんにバーンと、自分の飛行機が爆発しちゃう。

そういう話がいっぱい出てくる。そうすると、安定して撃てる銃でないとダメなの。それはもう切実な問題ですよ。

そう戦闘機は機銃の射撃台なんだから。
前の対談に戻る

次は「空中戦の極意」