所沢航空発祥記念館・新春企画
「所沢航空発祥記念館航空収蔵資料展」
2001年12月21日(金)〜2002年2月3日(日)

●九一式二型戦闘機胴体部分等の資料展示
●最近発見されたブレリオ機、ライト機の図面展示
●ギャラリートーク 
2002年1月13日(日)、14日(祝)、20日(日)、27日(日)各14:00〜15:00
●特別記念公開講座「徳川好敏と愛機たち」
※事前申込みが必要です。

普段は格納庫に収蔵されていて、特別公開日にしか見ることができない。翼は失われているが、金属の胴体部分、コクピット・計器などは往時のままの姿を留める。日本初の全金属機で、フランスの影響を受けたスマートなパラソル型単葉機と表される優美な面影を残す。

九一式二型は、それまでの戦闘機に比較すると、性能は格段に優れ、操縦も楽だったと伝えられる。二型は、一型とエンジンを換装し、プロペラを全金属製としたもので、1934年(昭和9年)に採用され、22機が製造された。

徳川好敏は、1936年(昭和11年)、陸軍大空中分列式に本機を操縦し、150機編隊の先頭機を務めている。当時の編隊には200機を超えるものもあり、好敏がそれらの先頭機を務めたという記録も多い。
<九一式二型戦闘機> 
全幅  11.00m
全長  7.30m
全高  3.00m

エンジン 中島「寿」二型
空冷星型9気筒460馬力
最大速度 300km
主翼面積 20.00u
総重量   1,530kg  
航続時間 2H
武装    7.7mm ×2
乗員    1名


「日本最初のパイロット徳川好敏とその愛機を見る

■レポート / 後藤加代子
Report+Photo

日本最初のパイロットは、いかにして空に生きたか
埼玉県所沢市にある所沢航空発祥記念館では、今、恒例の新春企画展が開催中だ。特に「所沢」関わるものを展示対象とするのが新春企画展の方針だが、第4回の今回はモノではなく人物に迫ろうと、日本初のパイロット・徳川好敏にまつわる展示となった。 好敏は、「飛行場」で飛んだ最初のパイロットでもある。軍人として航空の世界に生きた好敏は、悠々と飛ぶことはあっても、悠遊と飛ぶことはなかったのかも知れない。

▲書籍

空の先駆者
「徳川好敏」
発行:芙蓉書房
フランスで単独飛行練習中の徳川大尉(1910年10月)
徳川大尉が1910年11月8日授与された、わが国初のフランス航空協会による万国飛行免状・第289号

航空秘話復刻版シリーズ3「生きている航空日本史外伝(上)日本の航空ルネサンス」酣燈社刊より

●徳川好敏プロフィール

明治17年、伯爵家徳川篤守の嫡男として東京に生まれる。明治30年、陸軍幼年学校に入校以来、陸軍将校の道を一途に歩み、第二次大戦終戦に至るまでを軍人として生きた。

明治43年5月に、飛行機操縦技術習得のためフランスに出張、同年10月、アンリ・ファルマン機を持ち帰り、12月に日本初飛行に成功する。以後わが国における航空機の製作・操縦・それらの教育に関わり、常に航空の第一線で活躍した。フランス製アンリ・ファルマン機をモデルに、自ら設計・製作・試験飛行した会式1号機は、国産初の軍用機である。この他、日本の航空初期に導入されたほとんどの機の操縦・訓練を手がけている(後述「徳川好敏の愛機たち」参照)。終戦後は、航空同人会会長、日本航空機操縦士協会名誉会長として、航空史の執筆・講演活動などに励んだ。昭和38年、横須賀の仮寓にて病没。

新春企画展の主眼

「今回の企画展の主眼は、徳川好敏の人物紹介と、それに付随して、彼の搭乗した機体の紹介です。日本における初期の飛行機のほとんどが、ここで取り挙げられるでしょう。明治43年に代々木の練兵場で、日本で初めてアンリ・ファルマン機を飛ばした時から、第二次世界大戦の終焉まで、一貫して日本の航空界の重鎮であり続けた好敏の人間像を、この機会に多くの方々に知って頂けたらと思います。私個人の感想としては、強い使命感、強靱な魂の持ち主であったことに驚かされますね」

所沢航空発祥記念館・学芸員の近藤亮さんは、新春企画展の担当者として、第1回から展示の内容に工夫を凝らしてきた方だ。

「歴史のおもしろさは、置かれた状況において人間がどのように考え、思い悩み、与えられた使命を果たすべく動いたか、それを史料で辿り解き明かす、その醍醐味でしょう。好敏に関する書籍としては、本人の手による『日本航空事始』という日本の航空発達史以外にほとんどなかったのですが、奥田鋼一郎氏がそれを惜しんで、昭和61年に『空の先駆者 徳川好敏』(芙蓉書房)を上梓しています。遺族や好敏を知る人々からの資料提供を受けて、その人となりを、経歴を追いつつかなり克明に描き出したもので、それを読むと、彼は自分が日本初のパイロットであるということを終生誇りとし、それに伴う責任を敢然と全うしようとしたようです。力のある立場にあっても奢ることのない人物だった言われ、冷静且つ公正な判断を示して部下にも慕われた、好敏の人間像が描かれています」

今回の展示資料の一つに、好敏自身の書による以下の詩がある。

航空五十周年新春題
代々木原頭風凍
寸時飛行之天祐
春秋去来五十年
偲当時感慨更新

昭和35年、日本は航空五十周年を迎えた。その春、それを祝う米国の好意のしるしとして、それまで米国に保管されていた好敏の愛機アンリ・ファルマン機が、当時のジョンソン基地(現・航空自衛隊入間基地)に返還されている(終戦後、日本は一切の航空活動を禁じられ、同機は米軍により接収されアメリカ本土に送られていた)。詩はその周年祝典に際し詠まれた。最後に「為木村秀政先生」とあり、航研機の設計者で初の国産機YS-11の設計でも名高い木村秀政氏に捧げられている。

「好敏から、現代の航空機設計の第一人者・木村秀政氏に贈られた詩です。日本の航空の創生期から半世紀、ひたすら空に生きた好敏は、その未来を、次世代の雄たる木村氏にしっかりと託したのでしょう。淡々とした表現からは好敏の清廉な人柄が伝わるようです」

会場では、好敏が操縦を手がけた機体の写真と解説がパネル展示され、肉筆のノートや原稿、書簡なども見ることができる。「徳川好敏の愛機たち」として、以下の機体が収録されている。

アンリ・ファルマン1910年型機、モーリス・ファルマン1913年型機、ブレリオXI-2bis機、会式一号機、ニューポールNG単葉機、甲式三型戦闘機、甲式四型戦闘機、モ式六型機、九一式一型戦闘機、九一式二型戦闘機。

なお、今回の新春企画展には、新発見のブレリオ機、ライト機などの図面も展示されている。所沢飛行場開場当時、実際に所沢の空を飛行していた機体を駐機中に克明に採寸、B全に近い大判の和紙に烏口で正確に記録したと思われる。保存状態の大変よい詳細な三面図である。

▲所沢航空発祥記念館のロビーに下がる会式一号機(レプリカ)アンリ・ファルマン機を参考にして作られた、初の国産軍用機

▲航空五十周年祝典に際し、木村秀政氏にあてた徳川好敏の詩

▲大判の和紙に記録された詳細な三面図。(館内・特別展示コーナーより)

▲所沢航空発祥記念館外観

●所沢航空発祥記念館 

所在地:埼玉県所沢市並木1丁目地内(県営所沢航空記念公園内)
休館日:月曜日(但し祝日と重なる日はその翌日)、年末年始
開館時間:9:30〜17:00 (入館は16:30まで)
入館料:展示館/おとな \520 子供 \260 他に大型映像館有り
交 通:車/関越自動車道所沢I.Cから国道463号を所沢市街方向へ約6km
電車/西武新宿線「航空公園駅」下車 東口より徒歩約8分
問い合わせ:TEL 042-996-2225 FAX 042-996-2531
URL http://tam-web.jsf.or.jp/cont/index.htm